就活日記 > [特別企画]介護のしごと体験記|03

Interview

03

笠原 海飛さん

Kaito Kasahara

東北学院大学
経済学部
経済学科

あらゆる人が役割を持つ
交流の場で、
心豊かに暮らせる
“開かれた介護”を体感

高齢者向け住宅をはじめ、看護小規模多機能型居宅介護事業所や障害者就労継続支援B型事業所、保育園、飲食店などの機能が集約された、仙台市若林区の「アンダンチ」。高齢者や障害者、子どもたち、そして地域の人たちが自由に交流する多世代複合施設です。
今回、こちらにある高齢者向け住宅でさまざまな就業体験をしてくれた笠原さんに、介護の現場を見た感想や、介護についてのイメージの変化などを伺ってみました。

祖父母との関わり方を考えたことがきっかけで福祉に興味

介護に興味を持ったきっかけを教えてください。

笠原さん(以下、敬称略):現在、大学3年生なのですが、目指す職種がまだ決まっていません。今はいろいろな職業を見て、体験して進路を絞り込もうと考え、これまで金融や人材派遣、不動産などのインターンに参加してきました。福祉に興味を持ったのは、自分の祖父母と将来どう関わっていくかを考えたことがきっかけです。学んでいるのは大学の経済学部経済学科ですが、福祉の問題も経済と無関係ではありません。社会の高齢化が進む中、福祉の実態について知っておくことは重要と考え、就業体験の募集を見つけて応募しました。

地域の人たちも集う、開放的な施設のたたずまいに驚く

実際に現場を訪れて、施設を見た第一印象はいかがでしたか?

笠原:介護施設と聞いてビルやホテルのような外観を想像していたので、高齢者住宅がおしゃれな低層の建物で驚きました。広い敷地内には、看護小規模多機能型居宅介護事業所や障害者就労継続支援B型事業所、一般の人も入れる食堂などが集まっています。食堂の2階には保育園もあり、建物に囲まれた庭ではヤギを飼っていて地域のマスコットになっていたり、高齢者住宅の入り口横には近所の子どもたちに人気の駄菓子屋さんがあったり、福祉施設っぽくない雰囲気がとても意外でした。

今日はどんなことを体験されましたか?

笠原:最初にオリエンテーションで、施設の概要や取り組んでいること、今日の体験内容について説明を受けました。その後、職員の方に同行して入居者さんのお部屋の掃除をサポートしました。職員さんが掃除をするのかと思ったら、ここでは障害者就労継続支援B型事業所の利用者さんが行っていました。掃除の最中に動かせないものがあったら職員さんが動かすのをサポートするなど、あくまで支援にとどめて自立を促しているそうです。それから昼食配膳のお手伝いをして、午後から入居者さんとコミュニケーションを取りました。

最初に入居者さんとお話をした時は緊張しませんでしたか?

笠原:はじめは少し緊張しました。でもワクチン接種会場のアルバイトで高齢者とお話をする機会が多いためか、今日も一人ひとりにちゃんと向き合えたと思います。普段は大学で同じ年代の学生としか交流していないので、入居者さんから話しかけられ、本当の孫のように接してくださった時は、とてもうれしくなりました。

利用者から飛び出す本音に、介護の未来を改めて考える

その後のレクリエーションでは何をしましたか?

笠原:毎週火曜日の午後は音楽療法の時間があるそうで、私も別の職員さんと参加し、お手伝いしました。電子ピアノの演奏に合わせて参加した入居者さん全員で大合唱。歌詞が書かれたプリント用紙を配って、1 曲終わるたびに回収していると、まるで小学校の頃に戻ったみたいな懐かしい感覚になりました。歌うたびにどんどん笑顔になっていく入居者さんたちを見ていたら、私まで楽しい気分に。この時間が、今日の体験の中で一番印象に残っています。

今日は最後にビアガーデンのイベントがありましたね。

笠原:15時頃から準備をお手伝いして、入居者さんの輪の中に入ってお話をしました。お酒が入っていたこともあり、皆さんからは本音が飛び出すことも。中には介護の仕事に対する厳しいご意見もあり、高齢化の問題に対して社会が今後どう進んでいったらいいのか、また介護従事者の待遇面などに国がどう対処していくのか、といったことを改めて考えさせられました。

認知症の方への接し方や心構えを学んだ、実りある一日に

実際に施設をご覧になって、介護のイメージは変わりましたか?

笠原:就業体験をする前は、認知症の影響で言動が不安定になっている方が多いのかな、と思っていました。今日一日、実際に利用者さんとお話をしたりレクリエーションのお手伝いをしたりしましたが、皆さん笑顔で生活を送っているように感じました。

現場で職員さんの仕事ぶりを見てどう思われましたか?

笠原:以前は、介護といえば寝たきりの人のお世話など精神的にも肉体的にも疲れるきつい仕事が多いとか、淡々とお世話をするだけのドライなイメージを持っていました。でもこちらで職員さんの働く姿を見ていると楽しそうで、おじいちゃんやおばあちゃんたちに対しても一人ひとりに合わせて、まるで自分の親戚のように接している姿が印象的でした。もちろん、今回はごく一部しか体験していないのでそう感じたのかもしれませんが、終始楽しい就業体験でした。

この経験は、将来へつなげていけそうですか?

笠原:代表の方のお話を聞き、認知症は「病名」ではなく、いくつかの病気が重なって現れる「症状」のことだと知りました。そして治療薬の開発が難しいことや、だからこそ社会で受け入れるための環境整備が必要なことも。この施設では、利用者さん一人ひとりが自立を目的として支えあうことを第一に考えているところが、とても良いと思いました。今日は認知症が進行している方から同じ質問を何度もされる場面がありましたが、あらかじめ想定して心構えをしておけば、落ち着いてきちんと対応できるということがわかったのは、私にとって大きな収穫です。これからは認知症の方への関わり方や接し方も変わると思いますし、ここで得た学びは、将来進むべき道を決める上でも役立てられそうです。

Facility

担当者様

アンダンチ
株式会社未来企画

教育責任者・介護福祉士

片山 智美さん

Tomomi Katayama

介護する側・される側ではなく、互いに必要とし合う関係へ

一般的に高齢者とのコミュニケーションは相手の話を聞くものと思われがちですが、私は逆に、相手に話を聞いてもらうようにしています。認知症が進行し、普段は意思疎通が難しい方に、自分の悩みや愚痴を話すと、不意に心に響く一言をくれてはっとさせられることが何度もあるんです。私にとっては気持ちの切り替えになりますし、相手も自分が聞き手として役に立ったと感じられるのではないでしょうか。お互いを必要とし、支え、支えられる関係性が成り立つところに介護という仕事のおもしろさがあり、続けていく上での励みにもなっています。大切なのは、「認知症の高齢者」とひと括りにするのではなく、それぞれの人生を歩んできた一人の人間として、尊厳を持って向き合うことではないでしょうか。

介護の仕事は「3K」のイメージが強いかもしれません。確かに以前は手法も手探り状態で、教育体制も未熟でした。でも最近は理学療法士や作業療法士といった方たちが、「持ち上げない介助」など新しい手法を多角的に発信してくれています。加えて介護ロボットなどの普及で、従来のきつくつらい介護から肉体的負担が少なく楽しい介護へとますます変わっていくはずです。利用者さんが楽しく過ごすには、職員が仕事を楽しめることが必要。私は今、人材育成の部門で責任者を務め、職員のモチベーションを保つための教育体制づくりに力を入れています。

笠原さんには今日の就業体験を通じて、介護の仕事は3Kではないということがわかってもらえたようで安心しました。周りに溶け込むのにそれほど時間もかからず、後半は緊張が解けて表情が和らいでいたので良かったです。これからもこういった取り組みを続けるとともに、職員が楽しく働ける職場づくりを目指して、介護のおもしろさや楽しさを伝えていけたら、と思います。

Movie

未来企画 コーポレートムービー

本プロジェクトは厚生労働省補助事業介護のしごと魅力発信等事業 情報発信事業(WEBを活用した広報事業)として実施しています。(実施主体:楽天グループ株式会社)