就活日記 > [特別企画]介護のしごと体験記|02

Interview

02

奥谷 梨雅さん

Rika Okutani

金沢星稜大学
経済学部
経済学科4年

ICTを積極活用する介護の現場で
入居者の幸せと職員の働きやすさを実感

地域密着型特別養護老人ホーム「ささづ苑かすが」は、ICTの積極的な導入など、介護職員の負担軽減への取り組みを積極的に行っている福祉施設。デジタルやテクノロジーを活用した介護現場の生産性向上と、多岐にわたる職員の待遇改善、多様な人材活用などが評価され、2023年の厚生労働省「介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰」を受賞しました。今回、一日就業体験をした大学生の奥谷さんに、実際に介護現場を見て感じたことや印象の変化などについて伺いました!

祖母を在宅で看取った経験から抱いた介護への興味

介護の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。

奥谷さん(以下、敬称略):幼い頃から祖父母と一緒に暮らし、祖母ががんを患って寝たきりになり、最終的に家族と一緒に自宅で看取りました。両親が高齢になり、介護が必要となったとき、どう対処したらいいのか?自分で介護する、ヘルパーさんなどにお願いする、介護施設にお世話になる―─それぞれの選択肢について、若いうちに知っておいた方がいいかなと思いました。

今回、介護の就業体験に応募された理由はなんですか?

奥谷:家では祖母の介護を間近に見ていましたが、介護施設の中はどうなっているんだろうという興味がありました。就業体験のお話を聞いたとき、「介護施設の中に入ることができて、お話を聞けて、体験もできるの⁉」と驚き、すぐに応募しました。私は福祉以外の業界に就職が決まっていますが、今回の貴重な体験は違う仕事にも役立つだろうと思っています。

ぬくもりある明るい雰囲気、個人の意思が尊重される環境

今回の就業体験で印象に残ったことはなんですか?

奥谷:入居者さんの両脇を抱えて、ハグして持ち上げる介護ロボットが印象的でした。介護職員の江尻さんから「介護ロボットで持ち上げたとき、脇の辺りに骨や関節などが当たり、入居者さんはすごく痛みを感じます」と聞きました。私も実際に持ち上げてもらう体験をしましたが、介護される方が痛みを感じるということは知らなかったので、驚きました。

就業体験を通じて、これまで思っていたイメージと違ったことはありましたか?

奥谷:自分の中では、施設は病院のような無機質な雰囲気なのかなとイメージしていましたが、入ってみるとぬくもりを感じました。入居者の皆さんはいきいきと楽しそうに生活されていて、それぞれの部屋で過ごすだけでなく、共有スペースに集まってテレビを観たり、ごはんを食べたりしていて、思っていたイメージとは真逆でした。また、介護職員の方があらゆることを補助するのではなく、たとえばエプロンを着けて食器を洗ったり、デザートを用意したり、できることは入居者さん自身が行っていたんです。そのように個人の意思を尊重しているところが、とてもいいなと感じました。

午後のおやつの時間には入居者さんたちと楽しそうに話されていましたね。

奥谷:ごはんやおやつを配膳しているとき、入居者さんたちに「ありがとう」と言われ、うれしかったですね。初めは果物を「食べない」と言っていた入居者さんが、直接お渡しすると「じゃあ、食べる」と前向きになってくださり、自分のちょっとした働きかけが良い影響を与える、やりがいのある仕事だと感じました。

今回の体験を自分の仕事につなげ、介護の魅力を伝えていきたい

施設の印象はいかがでしたか?

奥谷:この施設では、入居者さんは3つのエリア(ユニット)に分かれて生活されていて、それぞれに戸建ての家のような玄関があって、入口に異なる装飾をすることで、入居者さんが自分の住んでいるエリアに戻れるように工夫されています。施設を建てるときに現場からの意見を聞き、反映しているということで、たとえばトイレは車いすからスムーズに降りられるように動線を考慮して便器が設置されているなど、細かい心配りがされた設備に驚きました。

大変だったことはありましたか?

奥谷:あえて大変なことを挙げるなら、汚物処置室の匂いでしょうか。でもずっとその部屋で過ごすわけではないし、人が生活する場所である以上は当然だと思いました。

家族や友だちに、今回の就業体験をどのように伝えたいですか?

奥谷:世の中には、介護の仕事はキツイ・大変というイメージがあると思いますが、むしろスタッフの皆さんは一緒に楽しんでいるように感じました。また、介護ロボットや見守りセンサーなどの進んだ技術も導入されていて、みんなが思っているイメージとは全く違う仕事だよと伝えたいですね。

介護の現場を見る機会は、なかなかないですよね?

奥谷:学校では介護を学ぶ機会がありませんでしたが、介護の現状をもっと早く知っていれば、自分の仕事として選んでいたかもしれません。学校で介護を学ぶ機会を増やしたら、世の中が持つ介護のイメージも変わるだろうなと思いました。

今後、この体験をどう将来につなげていきたいですか?

奥谷:私は地域貢献ができる仕事に就きたくて、町おこしの取り組みを行っている不動産会社から内定をいただいています。大学1年から学生団体に所属して、地元の課題解決に取り組んできましたが、地域を盛り上げて人の役に立ちたいという思いから選んだ仕事です。今日、介護の現場を見せていただいて、さらに介護に興味を持ち、今後の自分の仕事につなげていきたいと思いました。そして、家族や友だちなど周りの人たちに介護の魅力を伝えていきたい。小さいことですけど、そんなことから始めていけたらと思います。

Facility

担当者様

ささづ苑
かすが

かすがユニット部 次長

江尻 勇輝さん

Yuki Ejiri

「作業」から、入居者の視点に立った「自律支援」へ

当施設は3つのユニットに分かれていて、入居者さんたちはそれぞれのエリアで暮らしています。実はこの施設には、「死角」がたくさんあります。介護する側からすれば、入居者さんの様子が見える空間の方が介護はしやすいのですが、死角がないと入居者さんは常に誰かの視線を気にしなければならず、落ち着いて生活できないからです。また、水道は全て「手動」にしています。「自動」を使ったことがない入居者さんが多いからです。このように、当施設は入居者さんの視点に立った設計が細部に施されています。

介護は、人の温かみが感じられる仕事です。一般的には介護職員が入居者さんを援助していると思われがちですが、実際には逆。入居者の方々は介護職員のことをよく見ていて、たとえば「お腹空いているでしょ、何か食べていきなさい」と気にかけてくれ、逆にこちらの方が支えられているようです。また、入居者の方々は、ここに来たくて来たわけではなく、知らない人ばかりの環境の中で暮らしていますが、毎日何十回も感謝の言葉をかけてくれます。そうした様子を見ながら、入居者の方々の近くにいて役に立ちたいと日々感じて仕事をしています。

介護業界に入ってから20年以上、見守りセンサーや介護ロボット、音声で健康状態を入力できるアプリなど、ICTも日々進化し続けています。しかし、介護は知識と技術だけではできません。入居者さんの視点に立って考える、感性を磨き続けることが大切です。介護の仕事を志す方に伝えたいのは、介護と向き合っているかどうか?という問い。昔は介護職員の都合による「作業」でしたが、今は入居者さんの視点に立った「自律支援」に努めるべきだと思っています。

本日就業体験した奥谷さんは、印象がやわらかく、入居者さんたちと楽しそうにコミュニケーションしていました。入居者さんは第一印象で判断して、中には全く話さない方もいますが、奥谷さんには皆さん気軽に話しかけていて、介護の仕事に向いている人だなと感じました。介護以外の業界に就職するようですが、今回の体験を他の仕事にも役立ててほしいと思います。

Movie

ささづ苑 新卒用採用動画 「未来を決めろ」

本プロジェクトは厚生労働省補助事業介護のしごと魅力発信等事業 情報発信事業(WEBを活用した広報事業)として実施しています。(実施主体:楽天グループ株式会社)