文字が羅列されたスライドから、美しいビジュアルで構成されたスライドへ。セリフの棒読みから、感情を込めたプレゼンテーションへ。最近ではNHKでも放映されているTEDの例を出すまでもなく、シンプルかつ感情豊かなプレゼンは世の中の主流になりつつあります。そしていま、その技術を身につけようと、多くの人たちが試行錯誤しながら取り組んでいると思います。

「伝わるプレゼン」のテクニックを紹介するのに、長々と前置きをしてもしょうがありませんので、早速本題に入ります。

プレゼンでメッセージを伝えるためには、見やすく分かりやすいスライドが不可欠。そしてそのとき必要なのは(1)「写真を上手に活用する」こと、(2)「データの見せ方を工夫する」こと、(3)「動画を使ってより分かりやすく伝える」ことの3つです。目指すべきは、例えばこんなスライドです。

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もちろん多くのWindows向けパソコンにプリインストールされているプレゼンテーション用のアプリケーションを使用するのもいいでしょう。ただ、ビジュアルを工夫するにはそれ専用のアプリケーションを使うのが何よりも冴えたやり方だといえます。実際に、スライドの作成に、PhotoshopやIllustratorをはじめとする画像編集アプリケーションを使ってみると、スライドのクオリティは抜群に上がります。これから挙げる6つの方法を身につければ、プレゼンに必要なことをより高いレベルで完成させることができるはずです。以下、紹介します。

「写真を活用する」ことで、聞き手の心をつかむ

ひとつのメッセージを伝えるのに有効なのは、スライドを埋め尽くした文字の数々よりも、ときに1点の写真とひと言だけのフレーズ ──。そういったことは往々にしてあります。イメージを連想させるような写真を大きく使うだけで、内容を分かりやすく伝え、なおかつ聞き手に印象を強く残すことができます。用意した写真をより効果的に使うために必要なのは、「スライド内での写真と文字の色を揃えること」と「写真と文字のバランスを整えること」です。


・悪い例

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資料をつくるとき陥りがちなのが、伝えたいことを「台本」のようにプレゼン資料に盛り込んでしまうこと。まずはスライドに載せる文字要素を可能な限りシンプルにした上で、写真を使ってイメージを強化します。その際に、以下の2つのツール ── 「スポイト」と「グリッド」を使うことで、スライドのメッセージはより強く聞き手に伝わるはずです。

Tips - 1.「スポイト」〜写真と文字の色を揃える

1枚のスライドにいくつもの色が混在していては、見ている方はどこに目をやっていいのか分からなくなってしまいます。ですので、写真と文字とを配置する際には、文字の色を写真の色に揃えるのが鉄則です。Photoshopであれば、「スポイトツール」を使って簡単に写真の色を取り出せるので、そのまま文字の色として使うことができます。

・改善例〜その1

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例えば「3」という数字をイメージさせるビジュアルを用意し、背景として使用します。文字の色は、スポイトツールで写真と調和の取れる色を選びます。

「スポイト」ツールを選択、使用する写真の上にカーソルを合わせれば、指定した色を取り出すことができます。

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Tips - 2.「グリッド」〜写真と文字のバランスを整える

さらに、「グリッド」を活用することで、ビジュアルにバランスを与えることができます。その際に押さえておきたいのが「3分割法」。カメラによってはこうしたガイドラインを表示できるものもありますが、画面の縦横を3等分に区切ることで、より魅力的な構図を生み出す助けとなります。同様に、スライドにおいてもこのガイドラインに従って文字を配置すれば、デザイン全体に一体感が生まれます。

・改善例〜その2

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文字のバランスを整えるのに、グリッド表示を活用します。

Photoshopでの操作としては、[環境設定]で[ガイド・グリッド・スライス...]を選択し「分割数」を「3」に設定します。その後、[表示]で[グリッド]を選択すれば、画面上を3分割するガイドラインが表示されます。

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「データの見せ方を工夫する」ことで、聞き手に伝わりやすくする

プレゼンに数値の比較はつきものです。いざグラフ化して表現しようとしたときに、例えばエクセルを使えば、入力した数値をそのままグラフにして書き出すことも可能でしょう。ただ、スライドの統一感を出すために、グラフひとつの見せ方にもこだわりたくなるもの。Illustratorを使えば、ゼロから自由度の高いグラフを作ることができます。


Tips - 3.自由度高い図を描く方法

Illustratorでは、「グラフツール」を使うことで統計データをもとにしたグラフを簡単につくることができます。円グラフや帯グラフ、折れ線グラフなど9種類から選ぶことができ、それぞれカスタマイズすることも可能です。

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表計算ソフトで作れるグラフに比べて、より自由度の高いグラフを描くことができます

Tips - 4.トレスしてより滑らかで美しいグラフを描く

グラフをつくるだけなら、表計算ソフトに備わっている標準機能で作成することも可能です。ただ、それでは見た目にもありきたりな印象になってしまいます。そこで、作成したグラフの画像をIllustratorで加工する方法を紹介します。自分でグラフを描くことで、相手にどこに注目すべきか、何を見て欲しいのかをより明確に伝えることができるのです。

1.表計算ソフトで作成したグラフを画像にしてIllustratorで開きます

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2.新たにレイヤーを作成し、用意した画像の折れ線グラフを描画ツールでトレスします

グラフに必要なのは、実際の数値というよりも、数値がどう変化したのかという点であることが多いです。折れ線よりも効果的だというならば、帯グラフを選んでもいいでしょう。

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3.トレスした線のほか、必要な情報だけを配置し、強調したい箇所だけを残します。

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「動画を使う」ことで、より分かりやすく感動を伝える

聞き手に印象を残すのに、印象的な静止画が効果的だということは、先述した通りです。動画を活用すれば、さらにプレゼンで伝えたいことをいきいきと表現することができます。これはTEDなどでもよく見られる手法。例えば専門家のインタビューや、新しいサービスの機能を紹介するのに有効です。

意外と知られていないのですが、Photoshopでも動画を編集することができます。テキストなどとともに1枚のスライドに仕上げれば、メッセージを効果的に伝えられるでしょう。


製品を使ったスライド作成を試してみたい、と思っても、購入を躊躇するかもしれません。そういった方には、Adobe Creative Cloudを活用することをおすすめします。PhotoshopやIllustrator、Flash Professionalをはじめとするアプリケーションを利用できるサービスです。プロも使うアドビの豊富なクリエイティブツールを自由に選んで使うことができ、各アプリケーションはすべて最新バージョンのものを使えます。月々払いなのでお財布に優しいのもメリットのひとつといえます。

また、こちらのリンク先にあるとおり、学生の方であればさらにお得に使えます。ぜひチェックを。

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本記事はプレゼンの極意がつまった名著『プレゼンテーション Zen』(ガー・レイノルズ著、熊谷小百合訳、ピアソン桐原刊)を参考にしました。スライドの作成だけでなく、実際のプレゼンテーションに挑む際の準備についてより深く知りたい方は、ぜひ手にとってみてください。

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(ライフハッカー[日本版]編集部)

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