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「パワー半導体用SiCウエハ」で世界シェア30%以上を誇る昭和電工株式会社に突撃取材!1/2

ある分野でのシェアNo.1実績を持つ“世界に通用する日本の優良企業”に迫る本シリーズ。今回は日本を代表する化学メーカー、昭和電工株式会社にお邪魔し、次世代パワー半導体に用いられる「パワー半導体用SiCウエハ」についてお話を伺いました。「パワー半導体用SiCウエハ」の世界シェア30%以上を誇り、国内外から高い評価を得ています。

パワー半導体は電気自動車にも欠かせない存在!

そもそも、半導体って何?

「半導体」は、電気を通す物質である「導体」と電気を通さない物質の「絶縁体」の中間の性質を持つ物質のことで、19世紀に発見されました。

半導体と一言で言っても様々な種類があり、日常生活の色々な場面で使われています。身近なスマートフォンを例に挙げてみましょう。「プロセッサ」という種類の半導体は人間でいうと脳にあたり、私たちがSNS、ニュースなどのアプリを起動した際に、各機能につなぐ指示を出す役割をもちます。「半導体メモリ」と呼ばれる種類の半導体は記憶する役割を持ち、例えば画像や電話番号を記憶し保存する機能を担っています。そして、電話やメールをする時に活躍するのが「通信半導体」です。電話やメールの内容を、相手に伝える役割を担います。
スマートフォンを例に挙げましたが、もちろん半導体はスマホだけではなく、パソコンなど多くの電化製品や交通機関、あらゆる社会インフラに欠かせない存在です。

その中で、「パワー半導体」と呼ばれる半導体は、パワーをかける目的で使われ、動力を司ります。電気自動車に使われるモーター用途が有名ですが、鉄道や照明、ソーラーシステム、膨大なデータを蓄積するサーバーなどにも使われています。

▲取材時には、円盤型のSiCウエハを実際に見せていただきました

今回紹介するパワー半導体用SiCウエハは、昭和電工株式会社の次世代の主力事業候補の1つ。世界の市場規模は150億円以上。その中で昭和電工株式会社は30%のシェアを誇ります。SiCを使用した半導体は省エネ効果の高さから、次世代パワー半導体とも呼ばれています。

図:SiCパワー半導体の世界市場

今後予測されるSiCパワー半導体の世界市場規模。2017年には275億円規模にまで成長し、今後はさらなる拡大を続けていくと予測される。(出典:2018年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望/富士経済調べ)

昭和電工株式会社は1939年(昭和14年)に設立された老舗の化学メーカーです。設立当時は国産法で製造されたアンモニアを原料とする窒素肥料を主力事業としていましたが、現在は有機、無機、アルミニウム、エレクトロニクスに至る個性的な事業・製品を展開する化学メーカーとして広く認知されています。

ところで、時代に合わせ柔軟に変化を続けながら第一線を走り続けられるのはなぜなのでしょうか?

開発を始め、多くの現場に長年携わり続けるパワー半導体プロジェクトマーケティングユニット長、金澤博さんにその理由を語っていただきました。

次世代パワー半導体の原料、シリコンに代わるパワー半導体用SiCの登場

――早速ですが、パワー半導体について学生や馴染みのない人にも分かりやすくご説明いただけますか?

金澤「ひとくちに半導体と言ってもその用途・役割は多様です。パソコンに使われるフラッシュメモリなどの〈記録〉やモーターなどモノを〈動かす〉ものなど、その目的は多岐にわたります。パワー半導体は後者に分類されますね」

▲パワー半導体を使うことでの省エネ効果について語る金澤さん

主に、パワー半導体はソーラー発電用の回路、電車を動かしたり、各種のモーター制御などに使われているそうです。動力などに使われるため、大きな電圧・電力がかかるのが特徴です。

――パワー半導体の基盤材料であるSiC(炭化ケイ素。シリコンカーバイドとも。)ウエハを昭和電工がつくっているわけですね。

金澤「従来は、半導体の基盤原料にSi(シリコン)ウエハを使うのが主流でした。しかし、シリコンの場合、スイッチを入れ電気を流しエネルギーをパワーに変換するときに電気抵抗によって何%かは熱に変わってしまい、無駄が生まれてしまうのです」

数十年間重宝されてきたシリコンですが、半導体の進化により性能の向上が求められるにつれ、次第に物理的な限界に近づいてきました。本質的な課題である電力抵抗による電力損失についても、無視できないところまできていました。

――そこで登場したのがSiCなんですね。

金澤「SiCを使うことでロスが減るため、エネルギー消費が抑えられます。つまり、投じたエネルギーを非常に少ないロスでパワーとして使うことができるのです。」

装置の小型化・軽量化に向いているのもSiCの特徴。昭和電工が2015年により高品質なパワー半導体用SiC『ハイグレードエピ』を市場投入したことをきっかけに、市場の拡大以上に売り上げも急速に伸びていったとのこと。省エネ志向の高まりもあり、今後もこの動きは加速していくと考えられます。

半年~1年ほどで、昭和電工製SiCウエハの品質の高さが評判に

――逆に、SiCの弱みと考えていることはありますか?

金澤「SiCのライバルは従来品のシリコンです。常にシリコンと戦っているという意識はあります。自動車だけでなく、ソーラーシステムやサーバーも未だシリコンの牙城でもあるので。SiCは省エネだけど高価のため、費用に見合う効果をお客様に実感してもらうまでにどうしても時間を要してしまう、というのが弱みでしょうか」

その一方で、初期投資はかかるけれど、長い目で見れば省エネ効果で大きなエネルギー削減につながるのが、SiCの強み。高価なSiCを用いるお客様の費用を低減するために、より一層のウエハの品質改善がポイントになります。

――SiCのメリットを感じてもらうのに、どのくらいの期間がかかりましたか?

金澤「半年~1年程でお客様から良いフィードバックが得られるようになりました。お客様からも、昭和電工のウエハを使うことで良い品質の製品が高い収率で得られた、といううれしい報告が増えましたね」

SiCを採用したサーバーに切り替えてから放出される熱量が減ったことにより、サーバールームの電気代の節約になったとかソーラー発電の回路の冷却システムの簡素化が進んでコストダウンにつながったいう報告もあったといいます。また小型化が可能なこともあり、特に車載用の回路など応用できる製品の幅が広がるのもSiCの強み。対企業向けのビジネスでは珍しいですが、口コミでも評判が広がるようになり昭和電工のSiCの質の高さが認められるようになったのだそうです。

▲電気代の削減などの省エネ効果などからの市場拡大は、すべて想定内の結果とのこと

2016年後半頃から、パワー半導体用SiCの市場認知が広がる

――次世代パワー半導体の基盤材料であるSiCウエハ事業は、いつから始まったのでしょう?

金澤「最初は他の研究機関との合同事業として2005年にスタートしました。その後2009年から昭和電工の単独事業として行っています」

その後、2016年の後半頃からパワー半導体用SiCの市場認知が広がったといいます。決して安易な道のりではなかったと金澤さんは語りますが、今では世界中に認知され、お客様から問い合わせが来るほどになりました。

――市場認知・シェア拡大のきっかけは何でしょうか?

金澤「2015年の『ハイグレードエピ』の市場投入ですね。お客様が要求するシビアな品質基準を乗り越えることができ、そこから積極的に選ばれるようになりました。世界的な評価も高く、SiCウエハ市場の中でも重要なポジションにいると自負しています」

SiCの登場により、省エネを実現した“SiCパワー半導体”が生まれました。そして、SiCパワー半導体の市場拡大と共に昭和電工のSiCウエハのシェア・売り上げもまた伸びていきます。

金澤「現在、パワー半導体用SiCウエハの世界市場規模は150億円を超えています。昭和電工のパワー半導体用SiCウエハは世界シェアの30%を占めています」

――世界シェア30%とはかなり大きな数字ですね!業界内でも名高いのではないでしょうか。

金澤「はい、それは自信を持って言えます!!」

パワー半導体用SiCウエハの市場拡大の背景には、省エネ意識の高まりからシリコンからSiCへ移行しようとしている市場動向も関係している、と金澤さんは考察します。今後、応用先も増え、さらなる市場拡大が予想されると考えられます。昭和電工の次の主力事業候補として期待が寄せられています。

車載製品に昭和電工のSiCを広めたい

――パワー半導体用SiCウエハ事業において、今後やりたいと考えていることはありますか?

金澤「ソーラーシステムやサーバー等とは違い、自動車は人命に直結するもの。そのため、製品には高い品質、その結果として高い信頼性、確かな安全性が求められます。シビアな品質基準を乗り越えることができたSiCウエハが車載用途として積極的に採用されるようになります。お客様の様々な要求を叶え、車載製品にも広めていきたいですね」

確かな品質と安全性が認められ、鉄道にも使われているパワー半導体と、その基盤材料であるSiC。今後、自動車のモーター制御にも導入しようとする流れがあり、さらにビジネスの拡大が見込めるという見方もあります。省エネが叫ばれる時流の後押しもあり、次世代パワー半導体の基盤材料としてこれからますます活躍の舞台が増えそうです。

金澤「先ほどもお話しましたが、従来品であるシリコンとどう戦うかを常に考えています。差別化のために必要となるSiCウエハの品質をいかにアピールしていくかも課題です」

――昭和電工でこれまで働いてきた中で、思うことはありますか?

金澤「部署間・グループ間の垣根がない企業文化だな、と常に感じています。他のグループや部署からの協力が得られることが多いです」

――部署の垣根を越えて、助け合いができる風土ですね。

金澤「部署間の関わりが多い分、多方面からの情報が得やすい。だからこそ、時代や業界動向にしなやかに対応し、最先端をいく製品開発やビジネスができるのだと思います」

色々なメンバーがお客様やサプライヤーに自ら赴き、直接意見を聞きに行くこともあるのだそう。そういった仕事の仕方も、他社に比べてやりやすい土壌のようです。

昭和電工ならではの、仕事の面白さとは?

――昭和電工ならではの、仕事の面白さとは何だと思いますか?

金澤「自発的な働きかけ次第で、何でも挑戦できるところが面白いですね。やる気があり自ら手を挙げれば、年齢に関係なくやりたいことに挑戦できる。やる気と志がしっかりしていれば、自分の仕事の質をとことん深めていくことが出来る環境です」

――開発・営業共に経験を積んできた金澤さんならではの仕事のエピソードを教えて下さい。

金澤「開発からSiCの営業に移った時、昭和電工のSiCウエハの認知度を世界に広めることがミッションでした。ただ最初は海外のお客様にこちらからオファーを出しても、会ってもらえないことも多々ありましたが、世界一の品質だからお客様からの信頼を絶対に得られる、という自信も後押しし、あらゆる方法でアプローチをし続けました」

自信があるからこそ、世界に向けて自社製品を発信することが出来たのだそう。今では世界シェア30%を占め、SHOWA DENKO の社名とSiCを広めることになりました。

▲開発から営業に異動した金澤さん。どちらのリアルも知っています。

――率直にお聞きます。仕事ではどんな人と一緒に働きたいと思いますか?

金澤「若いうちからやりたいことや、自分のアイデアを多く持っている志の高い人と働きたいと思いますね。そして、自分の仕事が社会に関与しているという意識を忘れないでいてほしいです」

――貴重なお話をありがとうございました!

後編では昭和電工の採用や社員の働き方に迫ります

前編では開発・営業の現場を経験してきた金澤博さんに、昭和電工株式会社のリアルな現場について興味深い話を聞くことができました。

後編は、採用活動のリアルをお伝えします。昭和電工の社員はどんな働き方をしているのか?どんな採用を行っているのか?総務・人事部の徳野晶子さんにインタビューしました! お楽しみに!

関連リンク

昭和電工の掲示板・クチコミ - みん就(みんなの就職活動日記)

大城望(verb)

著者:大城望(verb)

編集プロダクションverb所属。立命館大学文学部卒業後、書店員・雑誌編集・WEBメディア編集のキャリアを経てライターに。現在は様々なジャンル・媒体で執筆。好きなものはアートと猫。常にジャンルや業界問わず、様々な「面白いもの」にアンテナを張っています。