データ処理技術の進歩に伴い、統計学について興味がある人は多いのではないでしょうか。この記事では、大学で学ぶ統計学の種類や統計学を活かせる職種、統計学を活かして身につけたいスキルなどを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
「統計学ってどういうことを学ぶの?」
「統計学を活かす仕事ってどんな職業があるの?」
このように、統計学について疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。
この記事では、統計学が活躍する場面や大学で学ぶ統計学の種類に加え、統計学を活かせる15職種と、統計学を活かして就活を有利に進めるために身につけたい3つのスキルを紹介しています。
この記事を読むことで、統計学が注目されるようになった背景や、統計学を活かせる仕事の内容、統計学を活かしてデータ分析を行う職業の将来性について把握できます。その知識を基に、統計学を就職に活かす方法について知ることができるでしょう。
統計学に興味を持ち始めた人は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。
統計学とは?
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統計学とは、ある目的のために収集されたデータを集計して分析する学問です。数字や符号が羅列しているデータを項目ごとに分類したり平均を出したりと、集計・分析して得た結果を目的のために活用します。
統計学は、コンピュータの発展とともに注目されるようになりました。それまでは膨大すぎて処理できなかったデータを、コンピュータにより処理することが可能になったためです。
統計学が活躍する場面は急激に多くなり、経営戦略やマーケティング、新商品の開発などで多大な成果をもたらすようになりました。こうして有用性が認識され始めた統計学は、今後もますます注目される分野といえるでしょう。
大学で学ぶ統計学の主な4つの種類
コンピュータ技術の発達とともに注目を浴びている統計学ですが、統計学の大半は数学の「確率」や「微分積分」の考え方を用いています。そのため、統計学は文系出身者よりも理系出身者に馴染み深い学問の1つでしょう。
ここでは、大学で学ぶ統計学の主な4つの種類について紹介します。
1:社会統計学の概要
現在では、政治・経済・教育・環境など多種多様な分野で社会調査が行われています。社会調査を基に、実際に起きている問題や特徴を浮かび上がらせることができるからです。
社会調査では、全ての人を対象に調査することはできないため、サンプリングによる標本調査によりデータを収集して分析を行います。つまり、社会統計学とは社会調査を行う際に用いる統計学のことです。
社会統計学は、抽出したデータを集計・分析して可視化することで、社会調査の目的達成に活用されています。
2:基礎統計学の概要
統計学におけるデータは、集計・分析されてはじめて意味あるものとなります。そのため、統計学を勉強する上で数学は必須であり、特に微分・積分の知識は不可欠です。
基礎統計学では、表計算ソフトや統計解析ソフトを用いて、基礎的な統計を学ぶことを目標としています。
3:記述統計学の概要
統計調査を行うときには多数のデータを集めますが、データをエクセルに入力しただけではデータが持つ特徴が分かりません。記述統計学とは、収集したデータから表やグラフを作ったり平均値などの数値を調べたりして、データの特徴を把握することです。
身近なところでは、学校のテストの平均点や偏差値、平均気温・平均株価などが記述統計の代表例といえます。
記述統計学の目的は、データを可視化して傾向を把握し、データを分析するためのベースを作ることです。
4:推測統計学の概要
調査の対象数が増えると全数調査は難しくなるため、全体の中から標本抽出(サンプリング)するという方法が出てきました。推測統計学とは、母集団(対象物全体)の中から一部を抽出して、抽出したデータ(標本)を使って母集団の情報を推測することです。
テレビ視聴率や世論調査、選挙の出口調査などが推測統計の代表例といえます。
推測統計学は「推定」と「検定」に分類されます。「推定」とは「~だろう」と予想することであり、「検定」とは2つの仮説のうちどちらかを採用することです。
統計学が活かせる職業15選
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ビッグデータが身近になったことにより注目されるようになった統計学ですが、以前から統計学で培った「データを分析するスキル」を活かせる職業というのは存在しています。
もちろん、膨大なデータの保有と活用が可能になったことで、今後統計学の知識が活かせる分野はさらに増えていくと予想されます。
ここでは、統計学が活かせる職業15選について紹介しますので、ぜひ就職活動の参考にしてみてください。
1:マーケターの仕事内容
マーケターとは、売上と利益を上げるために活動する人を指し、その仕事内容は多方面にわたります。マーケターの仕事内容は、市場調査、顧客の分析、商品の企画、広告宣伝活動などマーケティングに関するあらゆる業務に携わることです。
マーケターには売上と利益を上げるために情報を収集し、その情報を分析する能力が必要となってきます。
2:データアナリストの仕事内容
データアナリストとは、企業が蓄積している顧客データを集計・分析して、顧客の行動やニーズ、今後の動向などを予測し、企業が抱える課題の解決を支援するエキスパートです。
データアナリストの仕事は、「コンサル型」と「エンジニア型」の2つに分類されます。
コンサル型は企業の課題解決を目的としてデータを分析し、解決策を提案することが主な仕事です。エンジニア型はサービスの品質向上・機能改善を目的としてデータを分析し、システムを構築・改善する仕事です。
3:リサーチャーの仕事内容
リサーチャーとは、企業が商品を開発したり販売したりする前に市場のニーズを調査する人です。
リサーチャーの仕事は、消費者の嗜好や関心、競合他社の動き、小売店対策といったさまざまな動向を調査し、商品の開発・改善の方向性を指南します。
リサーチャーは商品のほか、販路や顧客層についても分析を行い、マーケティングの第一段階を担っています。
4:エンジニアの仕事内容
エンジニアとは技術者全般を意味しますが、近年ではITエンジニアを指すことが多いでしょう。IT技術は日常生活のいたるところで取り入れられており、エンジニアといっても種類によって仕事内容が異なります。
エンジニアの種類によって使用するプログラミング言語にも違いがあり、最近注目のR言語は統計解析向けに開発された言語です。
R言語を使うエンジニアとして、データエンジニアと機械学習エンジニアがあげられます。
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5:研究者の仕事内容
研究者とは、人々の暮らしを便利で豊かにするために研究を行う人で、研究者の多くは日々研究室で実験を行っています。
研究の分野は幅広く多種多様ですが、仕事内容は共通して「調査・実験」と「分析」です。
研究者はテーマに基づき調査・実験を行い、実験結果をデータにまとめコンピュータを用いてデータを分析していきます。
6:シンクタンク職員の仕事内容
シンクタンクとは、社会政策、政治、経済などの調査・研究・分析を行うことを目的とした研究機関です。日本のシンクタンクは政府系と民間系の2つがあり、〇〇総合研究所、〇〇研究所と名付けられるケースが多いです。
シンクタンクの仕事は、クライアントから依頼を受けたテーマについての研究で、研究結果を出すためにデータ収集と分析を行います。
シンクタンクのクライアントは、政府や自治体から一般企業まで多種多様です。
7:開発者の仕事内容
開発者の仕事内容は、研究結果を基に製品化を行うことです。製薬会社、食品会社、化粧品会社などさまざまな分野の企業で、開発者が製品の商品化に向けて活動しています。
開発職と研究職がひとまとめになっている企業も多く、仕事内容として研究と開発の両方が含まれるケースも多いです。研究開発者には開発スキルのほかに、データの収集と分析を行うスキルも求められます。
8:プロダクトマネージャーの仕事内容
プロダクトマネージャーの仕事は、売上目標達成のためにプロダクト(製品・商品・サービス)のプランを立てて実行していくことです。
プロダクトマネージャーはIT企業に多く見られる職種の1つで、その背景としてプロダクトを提供するIT企業の増加があげられます。他社との競合に負けないために、プロダクトのマーケティング戦略を一貫して担当するマネージャーの必要性が高まったためです。
プロダクトマネージャーには、顧客のニーズを知るための情報を分析するスキルが求められます。
9:アクチュアリーの仕事内容
アクチュアリーとは、確率論や統計学などを使って将来のリスク評価を行うエキスパートです。日本では、日本アクチュアリー会の会員がアクチュアリーとされています。
アクチュアリーの仕事は主に、生命保険・損害保険・企業年金といった保険分野で、統計データを基に保険料や支払保険金額の算定、企業の収支状況評価を行うことです。
近年、確率論や統計学を用いる場面が増加し、企業のリスク管理や経営企画といった異業種へも進出しています。
10:企画者の仕事内容
一口に企画者といっても、担当する仕事内容は業界や企業によってさまざまです。一般的に企画者の仕事とは、担当する部門の課題解決を目標にマーケティングを行い、企画を立案することです。
代表的な企画の仕事としては、商品企画、広告企画、営業企画などがあります。市場や消費者の動向を分析し、分析結果をベースに製品・サービスの開発、広告宣伝、営業活動のためのアイデアを形にしていきます。
企画の仕事は企画力や想像力だけでなく、リサーチ(調査)結果を分析する力も必要です。
11:IT技術者の仕事内容
IT技術者(ITエンジニア)とはIT業界で仕事をしている技術者の総称で、IT技術者の職種は広範囲に存在します。IT技術者の主な仕事は、コンピュータを動かすためのシステムを設計することです。
コンピュータのシステムを設計する際は、専門知識のほかに顧客からの情報を分析し、システムに必要なものを選び出すという分析力も必要になってきます。
IT技術者は業務内容によって、システムエンジニア、ネットワークエンジニア、サーバーエンジニアなど活躍の場が異なります。
12:クオンツの仕事内容
クオンツとは、金融・証券業界で働く数学・物理学のプロフェッショナルのことで、主な仕事は大量のデータを解析し、市場の動向やリスクを数値化し分析することです。
クオンツの仕事の場は、銀行、信託銀行、証券会社、生命保険会社、損害保険会社など多岐にわたりますが、共通して数値化したデータを基に利益を追求することが主要な任務となります。
このように、クオンツは金融・証券業界が利益を得るための根本に関わっているといえます。
13:化学分析員の仕事内容
化学分析員とは、研究施設において対象物に関する試験・検定・分析・調査などの業務に従事する人です。化学分析員の主な仕事は、製品中に含まれている成分や量の分析と調査です。
化学分析員は製造中の製品から抽出したサンプルを分析することで、成分量に異変がないことや化学反応に異常がないことなどを確認します。確認の結果、異変や異常があった場合は改善のための提案を行うことも、化学分析員の任務です。
14:AI技術者の仕事内容
AIとは人工知能の略称で、人間のような知能を持ったコンピュータのことを指し、AI技術者(AIエンジニア)とはAIに関わる開発を行うエンジニアのことです。
AI技術者の仕事は、機械学習やディープラーニングといった技術を用いて機械に学習させて自ら思考できるシステムを開発することで、主にAIの開発・学習・分析の3つに分けられます。
AI技術者にはシステム開発に必要な知識のほかに、分析をするために必要な情報処理・統計学など数学的知識も必要です。
15:コンサルタントの仕事内容
コンサルタントは製品やサービスを売るのではなく、コンサルティング(相談)業務そのものを商品として対価を受けます。コンサルタントの仕事は、相談を受けた企業や機関などの課題を見つけて「解決策の提案」と「実行の支援」をすることです。
業界によってどのような課題を解決していくかは異なりますが、コンサルタントに共通して求められる能力として、論理的思考力・コミュニケーション力・現状把握・調査力・分析力があげられます。
統計学を活かして就活を有利に進めるために身につけたい3つのスキル
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統計学を活かした仕事は幅広くありますが、「AI」や「ビッグデータ」の登場により、統計の知識を活かせる仕事はこれからも増加していくことが見込まれます。
そのため、統計の知識のほかにも統計に付随するスキルを上達させれば、就職活動を有利に進められる可能性が高まるといえるでしょう。
ここでは、統計学を活かして就活を有利に進めるために身につけたい3つのスキルについて見ていきます。
1:資料を作成するスキル
データの分析力が求められる仕事では、分析結果を分かりやすく伝える資料が重要になってきます。そのためには、図やグラフなどを作成して資料を可視化するスキルが必要です。
統計学の知識を活かす仕事は、分析結果を理解してもらうところまでが仕事であり、分かりやすい資料を作成するスキルは就職活動において有利なアピールポイントとなります。
2:論理的思考力
統計学を学ぶために論理的思考力は不可欠で、効率よくデータを収集したり根拠に基づいてデータ分析したりと、論理的に考える力は統計学の基本といえます。
また、論理的思考力というのは仕事のあらゆる方面で役立つ能力です。統計学で身につけた論理的思考力は就職活動では自身の大きな強みとなり、就職してからは業務の遂行に大いに役立つでしょう。
3:データを解析するスキル
膨大な量のデータの分析が可能となり、企業においてデータ活用が注目されている現在、データ解析の重要性が高まっています。
データ解析とは、分析によって明らかになったデータの構成要素を調べていくことです。統計学が基本となっており、今後もさまざまな産業で求められる知識といえます。このように、データを解析するスキルの需要は拡大しているため、就職活動で有利となるスキルの1つといえるでしょう。
統計学を活かして就職するためのキャリアパスは?
統計学を専門とする仕事に就くためには特別な資格は必要ありませんが、理系出身者が多いでしょう。
一般的なキャリアパスは、大学や大学院を卒業後、統計を学んだことを強みに新卒で統計学を活かせる企業へ就職活動を行います。インターンシップなどに参加して実務を経験しておくと、さらに周囲と差をつけることができるでしょう。
知識やデータ分析力、課題解決力を持っていることが、キャリアパスの指標になるといえるでしょう。
統計学を活かしてデータ分析を行う職業の将来性
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IT技術の進歩により、顧客の購入履歴や満足度、購入ルートといった膨大な顧客情報を分析することが可能になったため、データ分析による意思決定や課題解決を行う職業の需要は今後もさらに拡大していくと考えられます。
データ分析による意思決定や課題解決はまだ始まったばかりのため、今後どのような進化を遂げていくかは断定できませんが、データ分析は現代社会で重要な役割を担っているため、これからもデータ分析を行う職業の需要は続いていくと予測されます。
統計学を就職に活かす方法について知ろう
統計学を活かす分野に就職するためには、自分が希望する内容に合った就職先を見つけることが重要です。
大手企業のデータ分析部門や研究機関、自治体など、データ分析の部門がある場所を選択するという方法もありますが、これらはデータ分析を専門とするため就職の難易度は高く、相応の専門知識が求められます。
一方、自分が進みたい業界で統計の知識を活かせる分野を見つけるという方法の場合、まずは業界に必要な条件を把握することが大切です。この場合、統計やデータ分析の知識だけでなく、データをビジネスに応用できる力が必要となります。
本記事を参考に、統計学を就職に活かす方法について知ることで、自分に合った就職先を見つけましょう。

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