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管理職も迷わずゴミを拾う――刈谷ハイウェイオアシスがめざす“お客様目線”の人材育成術【注目の地方企業#5 後編】

愛知県刈谷市の高速道路と一般道の両方から利用できるレジャーエリア「刈谷ハイウェイオアシス」。東海地域はもちろん、東京など都市部からの観光客を呼び込んでいます。

前編では本施設を運営する刈谷ハイウェイオアシス株式会社の設立から、お客さま目線に立った経営方針などを伺いました。さらに後編では、採用や人材育成にフォーカスしていきます。

刈谷ハイウェイオアシスでは一体どのような方針で採用を行い、おもてなしのプロになるための社員教育をしているのでしょうか? 同社の取締役・管理部長の石川博一さんに伺いました。

刈谷ハイウェイオアシス株式会社 取締役・管理部長 石川博一さん

愛知県を中心に、東京からのUターン就職も歓迎

現在、刈谷ハイウェイオアシスの正社員は約30名、パートやアルバイトを合わせると100名以上のスタッフが働いています。その役割は経営管理や経理をはじめ、お土産売り場・産直市場の業務、公園管理までさまざまです。

現在、社員のほとんどは愛知県出身者で、刈谷市周辺の地元住民が多数を占めています。また2018年度には、刈谷市の隣にある知立市出身で東京の大学へ進学した新卒学生がUターン就職しました。

「採用する職種や人数は年によって違いますが、『お客様の目線で考えられる人材かどうか』を一番の判断基準として見ていますね。大企業のような規模では採用しませんが、だからこそ同じ部署の先輩からしっかりと仕事を学び、長く職場に定着して働いてほしいと思っています」(石川さん)

ちなみに、新卒で配属される部署も多種多様です。配属可能性があるのは、直営おみやげコーナーや産直市場「おあしすファーム」、ベーカリーの運営を行う3つの「営業課」はもちろん、場内整備や企画を担当する「公園管理課」、イベント管理や広報を担う「施設管理課」、そして会社を人事や経理として支える「総務経理課」など。

刈谷ハイウェイオアシスは「地域密着で、地域住民からも愛される施設づくり」という方針に基づき、観光客だけではなく、地域住民も楽しめるレジャー施設を運営しています。そのためには、お客さん目線で接客し、チャレンジを続けていく人材の採用と育成が最重要課題です。

思わずリピートしたくなる場所であるためにーー社員教育は現場主義

東海地域の名物とバラエティに富んだ商品がそろったお土産物売り場

一時は、東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に次ぐ第3位の来場者数を記録した刈谷ハイウェイオアシス。その集客力は、新規来場者だけではなく、多くのリピーターによって支えられています。思わず何度も寄りたくなる場所であり続けるために、どのようなこだわりをもって社員教育を行っているのでしょうか。

「総務や経理などの管理スタッフ、現場の清掃・販売スタッフも含め、実は固定の研修カリキュラムや新人研修を特に設けていません。入社後は新卒も中途も含めて、先輩と一緒に施設のさまざまな現場で仕事することで、『刈谷ハイウェイオアシスのスタッフとして、どう判断するべきか』を学んでいきます」

その判断のあり方は、採用時に重要視する「お客様の目線で考える」こと。接客はもちろん売場作りにおいても、その考える姿勢は明確に現れるそうです。

「例えば、お土産売り場に商品を並べるとします。そこでは、『どう並べれば商品が魅力的に見えるのか?』『お客さんが触わりやすくなるのか?』など、お客さんの心を動かすためにさまざまなことを考えなくてはいけません。お客さまが購入するまでの気持ちを考え、どういうレイアウトが一番良いのかを常に考える。スタッフにはそういう目線を持ってもらいたいですね」

その考え方は、レジャー施設の清掃においても徹底されています。

「私たちは管理職も含めて職種にかかわらず、フードコートやテラス席のテーブル、床にゴミが落ちていたら拾いますし、椅子が乱れていたらキレイに並べます。清掃スタッフが来るのを待っていたら、その間にお客さんが不自由な思いをするかもしれないじゃないですか。常に気持ちよくご利用いただける場所であるためには、そんな一人ひとりのちょっとした心遣いの積み重ねが大切なのです」

ちなみにメディアでも繰り返し取り上げられている総工費2億円以上、豪華で凝った内装が有名な「デラックストイレ」も、とにかく清潔に保たれています。

オープン当初からメディアで話題となったデラックストイレ

このデラックストイレは内装が豪華なだけでなく、行き届いた清掃が評判となりました。その結果、日本各地のサービスエリアや商業施設で、トイレの清潔さや利便性を見直す一つのきっかけになったそうです。さらに、他のトイレではほとんど見られない珍しい工夫をしています。

「女性用のデラックストイレの中には、授乳室やオムツ台があります。でも、オムツ替えをしているとき、嫌がるお子さんは動き出してしまいますよね。そこで、オムツ台の天井にテレビモニターをつけてアニメを流しています。また、一緒にいる兄弟姉妹も楽しめるように、子どもが見られる低い位置にも別のモニターを取り付けてあるんですよ」

子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層の利用者がいるからこその気遣い。「お客様目線」は施設の設計にもしっかりと行き届いています。多くの人が利用する場所だからこそ、少しでも心地よく過ごしてほしい。このおもてなしの精神は、現場の先輩から代々受け継がれてきたものです。

オープン時の2004年(左上)から、2007年(右上)と2011年(左下)の2回のリニューアルを経て、現在(右下)に至る

常にチャレンジしようという心意気をもって

そんな刈谷ハイウェイオアシスが今後チャレンジする一番大きな変化は、2022年3月を目処に導入予定のスマートインターチェンジ【※】。これによって、近隣地域で慢性的に発生している交通渋滞の緩和を筆頭に、ものづくり産業の生産性向上や地域活性化、防災機能の強化などが期待されています。

【※】スマートインターチェンジ…高速道路の本線やサービスエリア、パーキングエリア、バスストップから乗り降りができるように設置されるインターチェンジ。ETCを搭載した車両のみが利用可能。

刈谷ハイウェイオアシスサービスエリア側の駐車場

安価な産直市場やアトラクションを中心に、近隣に住む人々が長期間・継続的に足を運ぶビジネスモデルを作った刈谷ハイウェイオアシス。サービスエリア業界でこれは「刈谷モデル」と呼ばれ、1つの理想とされています。ほかのエリアへの展開もできそうに感じますが、石川さんは「どこでも真似できるものではない」と話します。

「刈谷ハイウェイオアシスは豊田市が近く、さらに名古屋から高速道路で約30分の場所です。人口が多く、外部環境に恵まれています。だから、私たちと同じような施設を別の地域で作っても、必ずしもうまくいくとは考えていません。違う場所では、違うやり方があるはずです。刈谷ハイウェイオアシスも、これからさらに近隣にお住まいのお客さまが求めているものへと、変化し続けていければと思います」

地域密着のサービスを展開する事業だからこそ、できるだけ長く定着してくれる人が入社してくれれば、と石川さんはほほ笑みます。最後に、これから就活に向き合う就活生に向けてメッセージをいただきました。

「自分の適性はわかっているようで、意外とわからないものです。我々が常に新しいことにチャレンジしているように、いろいろなことにチャレンジすることによって、また別の自分を発見できるかもしれません。私自身はかつて家具メーカーの工場で働いており、今のようにお客さまと話をしたことはほとんどありませんでした。新しい環境に入ったことで違う自分を発見でき、伸びていける可能性もあります。常にチャレンジしようという心意気でがんばってください」

後半では、刈谷ハイウェイオアシスの新卒採用や人材育成について伺いました。同社のように地域密着型の優良企業は、日本全国に点在しています。就職活動では広い視点の情報収集や企業研究をして、自分に合う会社を地道に探してみましょう。

 

取材・執筆:小澤志穂 編集:鬼頭佳代(ノオト) 撮影:かとうなをこ

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お話を伺った方:石川博一さん

お話を伺った方:石川博一さん

刈谷ハイウェイオアシス株式会社 取締役・管理部長。愛知県出身。1980年、カリモク家具へ入社。その後、2004年に刈谷ハイウェイオアシスオアシスに次長として入社。2016年より現職