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影の企画屋はここにいた! 香川県高松市・ツジセイ製菓のこれまでとこれから【注目の地方企業#3前編】

就職活動でおろそかにできない企業研究。就活サイトや口コミなど、インターネットに情報があふれている中で、ついつい社名に聞き覚えのある東京本社の大手企業ばかり調べていないでしょうか。ユニークな事業を展開する優良企業は、実は全国に点在しています。 そんな見落としがちな地方企業にフォーカスを当てる当企画第4弾。今回ご紹介するのは、香川県高松市に本社をおく株式会社ツジセイ製菓です。同社の事業は、全国の観光地のお土産菓子の製造・販売。ちょっぴり笑えるユニークなお土産は、全国のさまざまな観光地に陳列されています。その中には、誰もが見たことがある有名商品も……。しかし、取引先のブランド名で商品を製造するため、社名が表に出ることはほとんどありません。 そんな黒子の会社「ツジセイ製菓」とは、一体どのような企業なのでしょうか。本社を訪れ、代表取締役の田中大介さんに話を伺ってきました。

ツジセイ製菓・代表取締役・田中大介さん

取扱商品は700アイテム以上、全国のお土産菓子を作るツジセイ製菓

写真提供:ツジセイ製菓

ツジセイ製菓は設立以来、「驚きと感動を生む“おかし”な会社でありたい」をコンセプトに、一貫してお菓子作りを続けています。

その取引先は、ハウステンボス、海遊館、八景島シーパラダイス、宝塚大劇場など、誰もが知っている施設やテーマパークばかり。東京スカイツリーでは、ツジセイ製菓の商品が売れ筋トップ5の常連だそう。サンリオや吉本興業とも連携し、ご当地キャラクター商品の企画も手がけています。

「現在、取り扱っている商品は約700アイテムです。『どこで商品を売っているの?』とよく聞かれるのですが、全国の駅や空港、サービスエリアなどでツジセイ製菓のお菓子が販売されていますね」(田中さん)

主力商品は、パイやクッキー、ゴーフレット、チョコレート。また、キャラクターなどが印刷された「プリントクッキー」も人気だとか。さらに協力会社があるため、洋菓子・和菓子問わず、どんなスイーツも納品できる体制を作り上げています。

▲あえて完全な機械化はせず、パイ生地を折る最終工程は手作業で行っている

しかし、ツジセイ製菓の強みは製造だけではなく「企画」にあると、田中さんは話してくれました。社長自ら今もなお、5人いる企画営業チームのリーダーを兼任しています。

また、吉本興業と連携した企画では、プロの脚本家から企画案へのフィードバックを受ける機会もあるそうです。実は、過去に手がけた企画商品がインターネットを通じて大ヒット。Yahoo!ニュース トピックスにも取り上げられ、多くの反響が寄せられました。

数々のヒット商品を生み出してきた企画営業スタッフは日々、全国の観光地を飛び回っています。その多くは新規開拓営業ではなく、企画提案のルート営業。取引先の要望を聞くばかりではなく、自らさまざまな提案をすることで信頼を獲得してきました。

「御用聞きのように、ただ言われたとおりにお菓子を作っていたら、次の依頼はなくなってしまいます。だからこそ、とにかく足を使って多くのお客様を訪問し、誰も実行しないようなインパクトとユーモアのある『一味違った企画』をし続ける。その積み重ねが大切なんです」

例えば、島根県スーパー大使の吉田君(アニメ「秘密結社 鷹の爪」)とコラボしたチョコレートパイ「島根か鳥取かわからないけどそこら辺に行きました。」。ネットでも「自虐的過ぎる(笑)」と話題になった島根県のお土産です。

▲島根県の「よくある自虐ネタ」を切り口に商品化。パッケージを傾けると、質問と答えが出てくる

「企画はふざけすぎてはいけませんが、ちょっとしたユーモアはとても大切です。これだけたくさんの企画をしていると、内容量や価格などの必勝パターンは見えてきます。しかし、いまだに大ヒットの法則はよく分からず、意外なものが当たることがある。だからこそ、面白いんですよ」

企画数は年間100件以上。これだけ多くの企画を作り続けられるのは、多くの取引先からの引き合いがあるからこそ。そんなツジセイ製菓は、そもそもどんな経緯で創業したのでしょうか。

テーマパークブームと愛知万博をきっかけに、問い合わせの絶えない会社に

ツジセイ製菓の創業は1986年。瀬戸大橋の開通による地域の盛り上がりを見越して現会長・辻清太さん(初代社長)が立ち上げた会社です。

1988年に瀬戸大橋が開通したタイミングで、同社初のオリジナル商品を発売します。当時の四国ブームも相まって、製造した商品は創業当初から売れ行きを伸ばしていきました。

その後、本社の近くに開園したテーマパーク・レオマワールドを皮切りに、長崎県のハウステンボス、三重県の志摩スペイン村など、全国のテーマパークへ販路を拡大していきます。同時に、空港へのアプローチを開始。高松空港を手始めに、羽田空港や関西国際空港、福岡空港にも商品を展開しました。あまりの売れ行きに、明け方3時から深夜2時まで工場を稼働させないといけない日もあるほどだったとか。

さらに大きな転機になったのは、2005年に開かれた「愛知万博」でした。1日で最大25万人の来場者を動員したこの一大イベントに、お土産菓子の中核ベンダーとして関われるのはたった5社のみ。200社以上のお菓子メーカーからの立候補があり、大手企業が選ばれるなか、企画のユニークさや実績を評価され中小企業で唯一ツジセイ製菓が選ばれました。

当時、土産物売り場の営業担当者は、当時のお土産物売り場の盛況ぶりは「戦場のようだった」と話します。

このような愛・地球博での成功は、同社の存在がさらに業界の中で知られていくきっかけになりました。こういった成功の積み重ねから、問い合わせがどんどん飛び込んでくるようになったそうです。

「以前は当社のお菓子が置いてない場所に新規営業していましたが、最近はお客様から『何かできないか』と問い合わせをいただくことが多くなりましたね。これまでの積み重ねやつながりをベースに、ちょっと面白い提案をしてくれるのではないかと、お取引先の皆さまにご期待いただいているのではないかと思っています」

社長交代、そして2代目として着手する「働き方改革」

2代目社長の田中さんは、兵庫県出身。大学卒業後は名古屋のキッチンメーカーで設計職として2年間勤務し、その後、奥様が前社長・辻清太さんの娘さんだったため、結婚を機に高松の地にやってきました。入社するまでは、香川県にほとんど足を踏み入れたことがなかったそうです。

入社後は企画営業職としてさまざまな観光地を担当。これまで手がけた企画の中には、SNSで拡散され大ヒットした商品もあったそうです。そういった実績を積み重ね、2017年に代表取締役(共同代表・営業統括)に就任しました。

「今回の代表交代は当社初めてのこと。従業員はもちろん、取引先の皆さまにとっても大きな変化です。創業からずっと走り続けてきた会社を、これから若い世代がしっかり継承していかないといけません。足元をきちんと見て、じっくり経営に取り組んでいこうと考えています」

現在、代表として新たな課題への挑戦も視野に入れているという田中社長。例えば、2020年以降に行われる食品表示の法改正に伴う対策もその一つです。

今まではあまり表に出てこなかったツジセイ製菓の社名が、この法改正によって表に出てくるようになります。表舞台に出ることは、問い合わせ増加などのポジティブな効果だけではなく、逆にどんな会社が作っているのか、きちんと消費者に確認される立場になるわけです。そのためにも、いま最重要課題として位置づけているのが、「働き方改革」なんだとか。

「これは難しい課題で、まだまだ道半ばです。この数年で、作れる限りどんどん生産すればいいという発想から、限られた時間の中でいかに生産性を上げるかという発想へ。この流れにしっかりついていかないと、いい商品を作り、いい会社として経営を続けていくのが難しくなっていくでしょう。当社でも、従業員の働き方が変わるように生産システムも含め、さまざまな改善に着手し始めました」

地方の会社が独自のビジネスモデルで生き残っていくためには、時代を見据えた「変化」が必要です。先代から事業を引き継いだ田中社長は、働き方改革にとどまらず、ブランディングや知名度向上など、新たな打ち手を押し進めています。

▲代表交代時に改めてMISSIONや行動規範を定めたそう

前編では、ツジセイ製菓の成り立ちから成長してきた軌跡について伺いました。後編では、就活生が気になる社員採用や社員育成にフォーカスしてみましょう。

《後編に続く》

 

取材・執筆:鬼頭佳代(ノオト) 撮影:水子 貴皓

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田中大介さん

お話を伺った方:田中大介さん

ツジセイ製菓株式会社 代表取締役 営業統括。1982年兵庫県生まれ。大学卒業後、住宅設備メーカーでキッチン設計などを手掛ける。平成18年のツジセイ製菓入社後は、工場や商品開発、営業などの各部門に携わり、2017年より現職。