知名度はそこまで高くないけれど、ある分野でのシェアNo.1実績を持つ“知られざる日本の優良企業”に迫る本シリーズ! 第1回は、独自開発の光学ガラスを使用した光ファイバー事業で国内外から高い評価を得る日本唯一の企業『株式会社住田光学ガラス』です。
1953年の創業以来、光学ガラスの分野における数少ないエキスパート企業として光とガラスを追求し続け、国内のガラス産業において各分野のパイオニア的存在として活躍している株式会社住田光学ガラス。なんと非通信分野での光ファイバーで国内シェア6割の獲得実績を持っているんです!
ガラス製品といえば輸入品というのが当たり前の時代に、自社内で高度な精密加工技術を確立し国産化を進めました。ガラス製品で培ったノウハウをいかしたカメラレンズの開発で、デジカメを一般家庭に普及させた大きな立役者でもあります。
今回は世界シェアも高く、現在の主力である内視鏡などの医療用を軸にした光ファイバー事業に携わる常務取締役・沢登成人さんと、素材開発部課長・髙久英明さんにお話を伺いました。
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原料から光ファイバーを開発する日本唯一の企業
―― 早速ですが、住田光学ガラス株式会社で開発する光ファイバーについて教えてください!
沢登「光ファイバーとは、光や映像を運ぶガラスの芯(コア)と、それを覆うガラスで作られた二重構造の長い繊維状のガラスのことです。端から入った光や映像はコアの部分を通り端まで届きます。
光ファイバーは大きく分けて2種類。電話回線などに使われる高純度の石英を原料とした情報伝達のための石英系光ファイバーと、光学ガラスを原料とし、光や画像を伝達することを主な目的とした内視鏡などに使われる光学ガラス光ファイバーがあります」
住田光学ガラスが開発しているのは後者の光学ガラス光ファイバー。ガラスを引き延ばし、細い糸状にすることで作られます。
現在、光ファイバーの世界市場規模は約3000憶円。情報通信のための長距離通信を目的とした石英系光ファイバーが主流です。そんな中で、光や画像の伝達を目的とした光学ガラスから光ファイバーを開発している企業で、原料となる多成分ガラスから自社で開発しているのは住田光学ガラスだけなのです。
光ファイバーの束を使用した装置。ショールームに展示されています。
―― 光学ガラス光ファイバーだからこそできることとは?
髙久「石英系光ファイバーとの違いは伝達距離の短さ、そして光を取り込む角度の幅広さにあります。角度が小さく、用途も電話回線などの情報伝達に特化している石英系に対し、光学ガラス光ファイバーは原料に使うガラスの組み合わせ次第でさまざまな角度のものを開発できます。そのため内視鏡や胃カメラなどの医療機器から照明器具まで、幅広い用途に応用することが可能になります」
光を取り込む角度の狭い石英に対し、狭く広くも自由自在に光を操れるのが光学ガラス光ファイバーならではの強み。光ファイバーで新しく何ができるかを模索してきた結果、応用先も多様化しました。
―― 多様なガラス製品を実直に作り続けてきた、住田光学ガラスだからこそできる仕事ですね。
沢登「当社は1966年からガラスを使った光ファイバー開発に着手し、今日に至るまで作り続けてきました。研究を重ね、応用先の製品も増加しました。住田光学ガラスは、光学ガラス光ファイバー開発の先駆けです」
株式会社住田光学ガラスの誇る光ファイバー事業の成長を語る沢登さん
実は、原料となるガラスから自社で光学ガラス光ファイバーを製造しているのは住田光学ガラスだけだそう。
―― ということは、原料レベルから完全オリジナルの光ファイバーを開発している唯一の企業ということでしょうか?
髙久「はい。自社でガラスの原材料から吟味し調整することができるので、より透明度の高い高性能な光ファイバーをとことん追求できます。これまで培われた経験と技術という財産が基盤にあってこそです」
奥が深い……。原材料の生成から自社でできるからこそ、これまで培ってきた技術を光ファイバー開発にフル活用しているのだそう。原料づくりから自社で一貫して行う、オンリーワンの企業だからこそできる仕事ですね。
「まだ誰もやっていないことをしたい」精神で、光学ガラス光ファイバー開発のパイオニアへ
―― 光ファイバー事業を始めたきっかけとは何ですか?
沢登「昭和40年代始め、ガラス屋として多成分ガラスをはじめ様々なガラス製品を作り続けてきたことが評価され、国の研究機関のすすめで、光学ガラスから光ファイバーを作り始めました」
それまで多様なガラス製品を開発していたこと、当時から新しいもの好きな気風で、誰もやっていない新しいことをやりたいという思いが根底にあったのだそう。
―― なるほど! 開発への攻めの姿勢は当時から…
沢登「他の企業がやらないことをしよう!と思い光ファイバー事業を始めました。結果的に、当社が光学ガラス光ファイバー開発の先駆けとなりましたね」
この開発への攻めの精神は現在にも受け継がれています。
現在は医療用の光ファイバーが主力製品。売上のほぼ半分が海外!
―― 実際に、光学ガラス光ファイバーはどんな製品に使われているのですか?
沢登「光ファイバー事業に着手した当時は、産業用を主に作っていましたね。今では医療用機器を主軸とし、内視鏡などに使用される体内の様子を見るための画像伝達用や照明機器など応用先は多岐にわたります」
1966年に産業用の光学ガラス光ファイバーの開発をスタート。現在は産業用だけにとどまらず応用先は画像処理用・照明など多様化。最近は内視鏡などの医療用途の光ファイバーの需要が増えているとのこと。
髙久「光学ガラス系は長距離通信用の石英系と違って、短距離での画像伝達に適しています。光ファイバーを内視鏡に応用することで血管の中を見ることもできるんですよ」
「まだ誰もやっていないことに挑戦する」開発現場のリアルを語る髙久さん
現在は応用先も多様化し、最先端の医療用製品への応用が光ファイバー事業の主軸となっています。国内だけでなく欧米諸国からの評価も高く、光ファイバーを束ねた画像を伝送できるイメージガイドの世界シェアは4割ほどなのだとか。応用先が多様化したこと、医療用光ファイバー(イメージガイド)が主力となったことで、売り上げは伸びているそうです。
―― ちなみに海外との取引は?
沢登「ドイツの医療器メーカーと付き合いが長く、欧米諸国に顧客が多いので輸出比率は高いですね。2005年にはドイツに販売会社を設立しました」
ドイツ本土に競合他社があるにもかかわらず、住田光学ガラスの製品が選ばれていることからも、世界レベルで認められる性能の高さを裏付けています。欧米諸国にも顧客は多く、売上全体の35~40%は海外なのだとか。
住田光学ガラスだからこそできる“世界初”に常に挑戦していきたい
住田光学ガラスが開発してきた、さまざまな製品が並ぶショールーム
―― 次は、どんなことをやりたいと考えていますか?
髙久「まだ誰もやっていない新しいことをしたいと常に思っています。次は何をやろうか、光ファイバーが何に応用できるか…アイデアが常に頭の中にあります。大手企業があまり参入してこないので、独断場とも言えるかもしれません」
―― 多成分ガラスを作る企業は少ないということも大きく影響しているのでしょうか。
沢登「多様なガラスを使って新しいものを生み出せるのはうちならではの強み。他では出来ない、まだ誰もやっていない新しいものを生み出したいですね」
和やかな雰囲気で取材に応じていただき、社内の温かい雰囲気も伝わってきました
光ファイバーの主流である石英系の業界に参入し同じことをしても意味がない。同じ技術でも違う用途方法を常に探している。このブレない姿勢が唯一無二の開発に繋がるのです。
後編は住田光学ガラスの働き方、そして採用の軸に迫ります
常にまだ誰もやっていない新しいものづくりを追求し続け、唯一無二の存在となった住田光学ガラス株式会社。次回は同社の“自由すぎる”働き方や、未来を担う世代に求める採用の“ブレない軸”についてお話を伺います。お楽しみに!
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編集プロダクションverb所属。立命館大学文学部卒業後、書店員・雑誌編集・WEBメディア編集のキャリアを経てライターに。現在は様々なジャンル・媒体で執筆。好きなものはアートと猫。常にジャンルや業界問わず、様々な「面白いもの」にアンテナを張っています。